家の解体範囲は、建物本体だけとは限りません。基礎、外構、庭木、残置物、浄化槽、井戸、地中埋設物、整地まで、契約によって対象が変わります。
結論は、次の3点を見積書・契約書に明記することです。
- 撤去するもの
- 残すもの
- 追加費用が発生する条件
「建物解体一式」「更地渡し」だけでは範囲が曖昧です。土地売却や建て替えなど、解体後の用途から必要な仕上がりを決めましょう。
目次[閉じる]
家の解体範囲を5つに分けて確認する
| 区分 | 主な対象 | 注意点 |
|---|---|---|
| 建物本体 | 柱、梁、壁、床、屋根、内装、設備 | 全解体では通常対象になるが、付属設備まで確認する |
| 基礎・地下設備 | 基礎、杭、浄化槽、井戸、便槽、地下タンク | 標準工事に含まれない場合がある |
| 外構 | 塀、門、庭木、物置、カーポート、土間 | 建物本体と別項目になりやすい |
| 残置物 | 家具、家電、衣類、生活ごみ | 建設廃材とは処理方法が異なる |
| 仕上げ | 埋め戻し、整地、砕石敷き | 「更地」「整地」だけでは完成状態を判断できない |
実務ポイント1: 現地調査では口頭説明だけでなく、敷地図や写真に「撤去」「残置」を色分けして記録してもらいましょう。
建物本体はどこまで撤去する?
一般的な戸建ての全解体では、次の部分が対象になります。
- 柱、梁、壁、床などの躯体
- 屋根材、雨どい
- 窓、建具
- 内壁、天井材、床材
- キッチン、浴室、トイレなどの設備
- 建物に付属する配管・配線
- 基礎コンクリート
ただし、建物周囲の土間コンクリートや塀、庭木まで自動的に含まれるとは限りません。「家屋解体一式」ではなく、数量と範囲が分かる内訳を求めてください。
基礎・杭・浄化槽・井戸は個別に判断する
基礎
建物を完全に撤去する工事では、基礎も対象とすることが一般的です。ただし、深い基礎、地下室、古い基礎などは作業量とコンクリート処分量が増えます。
建て替えや売却を予定している場合は、撤去範囲と掘削深さを確認しましょう。既存基礎を残す判断については、解体で基礎を残す場合の注意点も参照してください。
杭
杭は地中深くまで施工されていることがあり、本体解体とは別扱いになる場合があります。抜くか残すかは、次の土地利用、構造、地盤への影響などを踏まえた個別判断が必要です。
建築図面や地盤改良の施工記録があれば、見積もり前に提出してください。杭を残す場合は、位置・本数・深さなど、分かる範囲を記録しておきます。
浄化槽・便槽
浄化槽や便槽は、清掃、撤去、埋め戻しなど処理方法が異なります。内部を確認できない場合は、発見後の追加条件も決めておきましょう。
詳しくは解体時の浄化槽撤去で確認できます。
井戸・地下タンク
井戸は所在地や今後の利用方法などに応じて処理を検討します。地下タンクは中身や設備の状態も確認が必要です。
井戸の処理方法は解体工事で井戸がある場合の対応を参照してください。
実務ポイント2: 図面、地盤調査資料、過去の増改築記録を業者へ渡し、杭・浄化槽・井戸・地下タンクの位置を見積書に記載してもらいましょう。

ブロック塀・庭木・物置などの外構は別途確認する
外構は建物本体の見積もりに含まれないことがあります。
- ブロック塀、フェンス
- 門柱、門扉
- 土間コンクリート、アプローチ
- カーポート、ガレージ
- 物置
- 庭木、植栽、庭石
- ウッドデッキ
- テラス、サンルーム
- 土留め
特に塀や土留めは、隣地との境界や所有関係を確認せず撤去してはいけません。共有物の可能性がある場合は、境界資料を確認し、必要に応じて隣地所有者や専門家へ相談してください。
個別の確認ポイントは、以下の記事で解説しています。
実務ポイント3: 「塀を残す」場合も、重機作業で傷めないための養生方法と、破損時の対応を契約前に確認しましょう。
家具・家電などの残置物は建物解体と分けて考える
家具、衣類、生活ごみなど、解体前から家にある残置物は、解体によって生じる建設廃棄物とは扱いが異なります。
2026年10月15日時点の環境省資料では、家庭から出る残置物は一般廃棄物であり、所有者などが市町村のルールに従って適正に処理することが基本とされています。解体工事業や産業廃棄物収集運搬業の許可だけで、家庭の一般廃棄物を処理できるわけではありません。
業者へ依頼する場合は、以下を確認してください。
- 回収する品目と数量
- 一般廃棄物の適正な処理体制
- 処分費が見積もりに含まれるか
- 貴重品や書類を確認する期限
- 家電リサイクル対象品の引取方法
テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機は家電リサイクル法の対象です。通常の解体廃材と一緒に処分する前提にしないでください。
残置物処分の詳細は、解体工事における残置物の処分方法を参照してください。

地中埋設物は工事中に判明することがある
現地調査だけでは分からず、掘削後に見つかるものがあります。
- 以前の建物の基礎
- コンクリート塊、瓦、廃材
- 古い浄化槽、便槽
- 井戸、地下タンク
- 杭
- 埋設配管
- 大きな石
追加費用の扱いは、当初の契約範囲、事前説明、現場条件、発見後の協議によって変わります。
契約書には、少なくとも以下を定めましょう。
- 発見時に工事を一時停止する
- 写真、種類、数量を報告する
- 撤去方法、追加額、工期への影響を提示する
- 施主が書面またはメールで承認してから着手する
追加費用が発生しやすい場面は、解体工事の追加費用で詳しく解説しています。
「建物のみ解体」と「更地渡し」の違い
建物のみ解体
建物本体を中心に撤去し、塀、庭木、物置などを残す契約です。既存外構を建て替え後も利用したい場合などに選ばれます。
ただし、基礎まで含むかは契約ごとに確認が必要です。
更地渡し
「更地渡し」は土地取引などで使われますが、具体的な完成状態を一律には示しません。地中埋設物や外構、庭木まで必ず撤去する意味とは限らないため、対象を列挙する必要があります。
整地
整地も仕上げ方法によって内容が変わります。
- 解体後の土をならす
- 凹凸を埋め戻す
- 転圧する
- 砕石を敷く
- 表土を入れ替える
「更地」と「整地」を同じ意味と考えず、完成高さや使用材料まで確認してください。仕上げの詳細は解体後の整地方法で確認できます。
解体範囲によって費用が変わる
解体費用は、地域、建物構造・規模、立地、重機の進入可否、廃材量、外構、基礎、残置物、アスベストなどで変動します。今回のリサーチでは、外構や地中埋設物まで含む全国共通の根拠ある金額は確認できないため、推測の費用は示しません。
費用差が生じやすい項目は以下のとおりです。
| 項目 | 費用が変わる主な理由 |
|---|---|
| 基礎・地下室 | 掘削量、コンクリート量、搬出条件 |
| 外構 | 種類、長さ、面積、隣地との位置関係 |
| 庭木・庭石 | 伐採、抜根、重量、搬出方法 |
| 残置物 | 品目、量、分別・処理方法 |
| 地中埋設物 | 種類、数量、深さ、処分方法 |
| 狭い敷地 | 手作業、小型重機、小運搬の増加 |
| アスベスト | 調査結果、建材の種類、除去方法 |
同じ条件で複数社を比べるには、撤去範囲を統一して見積もりを依頼してください。
見積書で確認すべき項目
次の項目が「一式」だけになっていないか確認しましょう。
- 建物本体と基礎の撤去範囲
- 屋根材、内装、設備の撤去
- 足場、養生、散水、近隣対策
- 外構の種類、数量、寸法
- 庭木、庭石、物置、カーポートの扱い
- 残置物の品目と処分方法
- アスベスト事前調査費
- アスベスト検出時の再見積もり条件
- 地中埋設物の追加条件
- 運搬・処分費
- 埋め戻し、整地の仕様
- 届出の担当者
- 追加工事の承認手順
- 工事完了時に受け取る書類
見積書全体の見方は、解体工事の見積書で確認するポイントも参考にしてください。
実務ポイント4: 相見積もりでは全社に同じ「撤去・残置リスト」を渡してください。総額だけでなく、対象範囲が同一かを比較します。
アスベスト調査と建設リサイクル法
アスベスト事前調査
2026年10月15日時点の厚生労働省公式案内では、建築物の解体・改修工事は、規模や請負金額にかかわらず原則として工事前のアスベスト事前調査が必要です。
建築物の解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は、アスベストの有無にかかわらず調査結果の報告対象です。80㎡は事前調査自体の要否を分ける基準ではありません。
吹付石綿や石綿含有保温材・断熱材・耐火被覆材など、届出対象となる作業では、発注者または自主施工者が原則として作業開始の14日前までに自治体へ届け出ます。建材や作業内容によって対象外となる場合があるため、調査結果に基づき確認してください。
詳しくはアスベスト含有建物の解体ガイドを参照してください。
建設リサイクル法
2026年10月15日時点の国土交通省公式案内では、特定建設資材を用いた建築物の解体で、解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は届出対象です。
原則として、発注者または自主施工者が工事着手の7日前までに届け出ます。床面積が基準未満の場合や対象資材を用いていない工事は国の同基準による届出対象外ですが、自治体独自の条例や別の手続きが適用されることがあるため、所在地の窓口で確認してください。
解体後は建物滅失登記を確認する
2026年10月15日時点のe-Gov法令検索で確認した不動産登記法第57条では、登記された建物が滅失した場合、表題部所有者または所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。
工事完了時には、解体証明書など、申請に必要となる書類の発行可否を業者へ確認しましょう。未登記建物、相続登記が未了の物件、権利関係が複雑な物件については、法務局や土地家屋調査士などへ相談してください。
手続きの流れは建物滅失登記の方法で解説しています。
現地調査で業者に渡すチェックリスト
- [ ] 解体後の用途を伝えた
- [ ] 撤去するものを敷地図へ記入した
- [ ] 残すものを敷地図へ記入した
- [ ] 基礎の撤去範囲を確認した
- [ ] 杭・浄化槽・井戸・地下タンクの資料を渡した
- [ ] 境界と共有塀を確認した
- [ ] 残置物の処分方法を確認した
- [ ] アスベスト調査の範囲と費用を確認した
- [ ] 地中埋設物発見時の手順を決めた
- [ ] 整地後の高さと仕上げを指定した
- [ ] 撤去対象・対象外が見積書へ明記された
- [ ] 追加工事は事前承認制にした
まとめ
家の解体では、建物本体に加えて、基礎、杭、浄化槽、井戸、外構、残置物、地中埋設物、整地まで確認が必要です。
業者には「家を壊してほしい」ではなく、解体後に土地をどのような状態で引き渡してほしいかを伝えましょう。現地調査を受け、撤去するもの・残すもの・追加条件を図面、見積書、契約書に明記することがトラブル防止につながります。
参考資料
本記事の制度・手続きに関する記載は、2026年10月15日時点で以下の一次資料を確認した内容に基づいています。
- 厚生労働省|解体業者
- 厚生労働省|小規模工事等の着工前に必要な手続きについて
- 厚生労働省|発注者・施主
- 国土交通省|建設リサイクル法
- 国土交通省|建設リサイクル法 届出窓口一覧表
- 環境省|解体工事等を発注する建築物の所有者等・建設工事元請等のみなさまへ
- 環境省|建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について
- 経済産業省|家電リサイクル制度FAQ
- 法務局|建物を取り壊した場合の建物滅失登記
- e-Gov法令検索|不動産登記法第57条