解体工事の見積もりは、現地調査を受けたうえで、同じ条件を2~3社へ伝えて比較するのが基本です。総額だけでなく、基礎や外構、廃棄物処分、石綿(アスベスト)調査、整地の範囲まで確認しましょう。
解体工事に全国一律の価格はありません。坪単価は参考にとどめ、追加費用が生じる条件を含めて判断することが大切です。
目次[閉じる]
解体工事の費用を左右する条件
解体費用は、構造や延床面積だけでは決まりません。主に次の条件で変わります。
| 条件 | 確認内容 |
|---|---|
| 構造・規模 | 木造、鉄骨造、RC造、階数、延床面積 |
| 搬出条件 | 接道幅、重機やダンプの進入可否 |
| 周辺環境 | 隣家との距離、住宅密集地か |
| 撤去範囲 | 基礎、塀、庭木、物置などを含むか |
| 廃棄物 | 種類、量、処分場までの距離 |
| 石綿 | 事前調査、分析、除去の要否 |
| 施工方法 | 重機解体か、手壊しが必要か |
坪単価を見る際の注意点
基礎撤去や廃棄物処分を含まない単価では、最終的な支払総額を比較できません。算定面積と含有費目を確認してください。

構造・坪数別の相場は現地見積もりで確認する
木造、鉄骨造、RC造では、必要な重機や工期、廃棄物の種類が異なります。一般に構造が強固になるほど作業負担は増えますが、地域や敷地条件による差も大きいため、全国共通の坪単価は示せません。
概算額を比べる場合は、同じ延床面積、撤去範囲、整地仕様で依頼してください。最終判断には現地調査に基づく見積書が必要です。
現地調査が必要な理由
図面や写真でも概算は出せますが、契約前には現地調査を依頼しましょう。現場では次の項目を確認します。
- 重機やダンプが進入できるか
- 隣家との距離と養生の範囲
- 手壊しが必要な箇所
- 基礎や地下室の構造
- 塀、庭木、物置などの付帯物
- 家具や家電などの残置物
- 交通誘導員の必要性
- 建材の石綿含有状況
現場を確認しない見積もりは、数量不足や項目漏れによる追加請求につながる可能性があります。
解体工事見積書の主な内訳
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 仮設工事費 | 足場、防音・防炎シート、仮囲い、散水設備 |
| 建物本体解体費 | 内装、屋根、外壁、躯体、基礎、手壊し |
| 廃棄物処分費 | 木くず、コンクリートがら、石膏ボードなど |
| 収集運搬費 | 車両、運搬回数、処分場までの運搬 |
| 付帯工事費 | 塀、門扉、物置、樹木、井戸、浄化槽など |
| 石綿関連費 | 事前調査、分析、除去、運搬、処分、報告 |
| 設備撤去費 | 電気・ガス・水道の切離し、フロン回収など |
| 整地費 | 埋戻し、転圧、山砂・砕石、仕上げ |
| 諸経費 | 現場管理、重機回送、交通誘導、保険など |
| 税・控除 | 消費税、金属売却益などの控除 |
「解体工事一式」という表記が多い場合は、対象範囲、数量、単価を質問してください。

見積もりに含まれないことがある工事
- 残置物の処分
- ブロック塀や庭木の撤去
- 石綿の分析・除去
- 地中埋設物の撤去
- 井戸や浄化槽の処理
- ライフラインの切離し
- 各種届出の代行
- 建物滅失登記
- 追加の養生や交通誘導
- 消費税
現地見積もりが無料でも、石綿分析や測量は有料の場合があります。無料となる範囲を依頼前に確認しましょう。
見積もり依頼から契約までの流れ
- 建物と土地の資料を用意する
- 同じ条件で2~3社へ依頼する
- 各社の現地調査を受ける
- 石綿事前調査の範囲と費用を確認する
- 工事範囲、内訳、除外項目を比較する
- 許可・登録と廃棄物の処理方法を確認する
- 追加費用の発生条件を協議する
- 補助制度の申請条件を確認する
- 契約書、約款、工程表を確認する
- 書面で契約し、必要な届出へ進む
業者へ伝える情報と用意する資料
伝える情報
- 所在地、用途、構造、階数、延床面積
- 建築年と増改築歴
- 空き家か居住中か
- 接道状況と残置物の量
- 外構、樹木、井戸、浄化槽の有無
- 希望時期と解体後の土地利用
- 石綿調査歴と補助金利用の予定
用意するとよい資料
- 登記事項証明書、固定資産税課税明細書
- 建築確認図書、設計図、平面図、敷地図
- 測量図や境界資料
- 増改築履歴と石綿調査報告書
- 現況写真
正確に比較できるよう、全社へ同じ資料と撤去条件を渡してください。
相見積もりの比較ポイント
- 税込か税別か
- 延床面積と構造が同じか
- 基礎撤去を含むか
- 養生の範囲と仕様
- 廃棄物の数量、単価、処分先
- 外構と残置物の撤去範囲
- 石綿調査、分析、除去の扱い
- 地中埋設物発見時の算定方法
- 整地の仕上げ方法
- 届出代行費、近隣対応、工期、支払条件
- 滅失登記用書類の発行
- 有価物の売却益が控除されるか
極端に安い見積もりで確認すること
安いことだけで問題とは判断できません。ただし、処分費や基礎撤去、必要な養生が除外されていないか確認してください。
建設廃棄物の排出事業者は原則として元請業者で、マニフェストの交付・保存も元請業者が行います。施主への写し交付は一律の法定義務ではありませんが、必要に応じて処理状況の説明や写しの提示を求めるとよいでしょう。

追加費用が発生しやすい原因
地中埋設物
解体後に旧基礎、コンクリート塊、井戸、浄化槽、地下タンク、埋められた廃棄物などが見つかることがあります。
発見時には作業を止め、写真、数量、処分方法、追加額を提示してもらいます。「施主の書面承認後に着手する」と契約書へ定めておくと安心です。
石綿(アスベスト)
建築物の解体では、原則として工事前に石綿含有建材の有無を調査します。80平方メートル未満でも、調査自体が不要になるわけではありません。
解体部分の床面積が合計80平方メートル以上の場合、元請業者または自主施工者は、石綿の有無にかかわらず、着工前に労働基準監督署と都道府県等へ事前調査結果を報告します。建築物の事前調査は、原則として必要な資格を持つ者が行います。詳しくは厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」や環境省「石綿事前調査結果の報告について」を確認してください。
| 手続き | 概要 |
|---|---|
| 事前調査結果報告 | 一定規模以上の解体工事について、石綿の有無を問わず着工前に報告 |
| 計画届・作業届など | 石綿含有建材の種類や作業方法に応じて必要となる場合がある |
提出先、義務者、期限は手続きによって異なり、作業開始14日前までの提出が必要な届出もあります。見積書では、調査費、分析費、報告対応費、届出対応費、除去・運搬・処分費を分けて確認しましょう。
その他の追加要因
- 想定より深い基礎や未確認の増築
- 残置物や手壊し範囲の増加
- 交通誘導員や養生の追加
- 汚染土壌
- 業務用機器のフロン回収
届出費用と業者の許可・登録
建設リサイクル法
特定建設資材を用いた建築物の解体で、解体部分の床面積合計が80平方メートル以上の場合は、原則として建設リサイクル法の対象です。発注者または自主施工者は、原則として着手7日前までに届け出ます。条例により対象規模が引き下げられる場合があるため、自治体にも確認してください。
対象工事の契約書面には、分別解体等の方法、解体工事費、再資源化施設の名称・所在地、再資源化費用などの記載が必要です。工事完了後は、元請業者から再資源化等の完了に関する書面報告を受けます。制度の詳細は国土交通省「建設リサイクル法」で確認できます。
許可・登録
税込500万円以上の解体工事には、原則として該当する建設業許可が必要です。500万円ちょうども「500万円未満」には含まれません。
税込500万円未満の工事のみを請け負う場合でも、解体工事業を営むには原則として工事を行う都道府県ごとの解体工事業登録が必要です。ただし、該当する建設業許可がある場合などは扱いが異なります。契約前に許可・登録番号と有効性を確認してください。
契約前のチェックリスト
- 見積書の有効期限、工事範囲、除外項目
- 基礎、付帯物、残置物の撤去範囲
- 石綿調査、分析、除去の扱い
- 地中埋設物の単価と追加工事の承認方法
- 工期、支払時期、契約解除条件
- 損害賠償保険と近隣対応
- 廃棄物の処分先
- 整地仕様と完了基準
- 滅失登記用書類の発行
- 建設リサイクル法上の契約記載事項
- 完了後の再資源化等完了報告
追加・変更工事は、内容、金額、工期を書面化しましょう。

補助金・助成制度は契約前に確認する
空き家解体などの補助制度は自治体ごとに異なります。交付決定前に契約や着工をすると対象外になる制度もあるため、先に市区町村へ相談してください。
- 申請期限と必要書類
- 老朽度判定の有無
- 利用できる業者の地域要件
- 石綿調査・除去費が対象か
- 契約・着工できる時期
よくある質問
解体工事の見積もりは無料ですか?
無料の業者もありますが、必ず無料とは限りません。石綿分析や測量が有料の場合もあるため、事前に範囲を確認してください。
相見積もりは何社に頼めばよいですか?
2~3社が比較しやすい目安です。社数よりも、各社へ同じ条件を伝えて内訳と除外項目を比べることが重要です。
80平方メートル未満なら石綿調査は不要ですか?
いいえ。80平方メートルは建築物解体における事前調査結果の報告基準であり、事前調査自体は原則として規模を問わず必要です。
地中埋設物の撤去費は含まれますか?
存在を事前に確認できなければ、別途となることがあります。発見時の報告方法、算定方法、承認手続きを契約前に決めてください。
一番安い業者を選んでも問題ありませんか?
金額だけでは判断できません。項目漏れ、追加費用の条件、許可・登録、廃棄物の処理方法まで比較しましょう。
まとめ
解体工事の見積もりでは、総額だけでなく「何を撤去し、何が別料金なのか」を確認することが重要です。現地調査を受け、同条件で相見積もりを取り、地中埋設物や石綿への対応を書面化しましょう。
補助制度を利用する場合は契約前に自治体へ確認し、建設リサイクル法の対象工事では契約書の記載事項と完了報告も忘れずに確認してください。