解体業に関わる営業職が、解体工事のリアル、現場仕事の判断、ゴルフや日常の暮らしを実体験で綴るブログ。

建物解体時の浄化槽はどうする?撤去・埋め戻し・届出・費用を解説

建物解体時の浄化槽はどうする?撤去・埋め戻し・届出・費用を解説

建物の解体で浄化槽を使わなくなる場合は、一般に次の順で対応します。

  1. 浄化槽の位置・種類・容量を確認する
  2. 自治体の案内に従い、撤去前に最終くみ取り・清掃・消毒を行う
  3. 槽本体や付属設備を撤去し、適切に処分する
  4. 撤去跡を埋め戻して転圧・整地する
  5. 使用廃止日から30日以内に廃止届を提出する

残置・部分撤去の可否や必要な処置は、自治体の取扱い、槽の状態、土地の利用計画によって異なります。ただし、汚泥や槽の破片などを処分目的で地中へ埋める方法は避けてください。

売却や新築を予定している場合は、将来の掘削や地盤への影響も踏まえ、本体撤去を基本に検討します。

目次[閉じる]

建物解体時の浄化槽対応の流れ

時期 対応内容 主な確認先
見積もり前 有無・位置・種類・容量を確認 自治体、点検業者、所有者
解体前 最終くみ取り・清掃・消毒 自治体の許可を受けた清掃業者等
解体工事中 本体・ブロワー・配管などを撤去 解体業者
撤去後 埋め戻し・転圧・整地 解体業者
使用廃止後 30日以内に廃止届を提出 所在地の自治体窓口

清掃・消毒の実施方法や廃止届の添付書類は自治体によって異なります。所在地の自治体へ早めに確認してください。

浄化槽の清掃業者と建物の解体業者は別になることがあります。誰が手配するのか、契約前に決めておきましょう。

実務ポイント1
最終清掃日と浄化槽撤去日の間を空けすぎると、生活排水が再び流入する可能性があります。建物の使用終了日、清掃日、解体着工日をまとめて調整してください。

解体前に浄化槽の有無・種類を確認する方法

浄化槽は地中にあるため、所有者が存在を把握していないこともあります。特に古い建物では、現在使っていない浄化槽や便槽が残っている可能性があります。

書類を確認する

次の資料を探してください。

  • 浄化槽設置届などの届出書類
  • 保守点検契約書
  • 清掃記録
  • 法定検査の結果書
  • 建築時の配置図・給排水図
  • 過去の工事記録

書類が見つからない場合は、自治体の浄化槽担当窓口や、保守点検・清掃を依頼していた業者へ確認します。

敷地内の設備を確認する

浄化槽の手掛かりとなる設備は次のとおりです。

  • 庭や駐車場にある複数のマンホール蓋
  • 建物脇にあるブロワー
  • 点検口やポンプ設備
  • 浄化槽へ接続している排水管
  • 放流先へ延びる配管

単独処理浄化槽か合併処理浄化槽か、容量や材質は何かも確認します。これらは、撤去する廃材量や清掃・搬出方法を検討する材料になります。

実務ポイント2
敷地図にマンホールとブロワーの位置を書き込み、蓋・周辺・搬出経路を撮影しましょう。同じ資料を相見積もり各社へ渡すと、見積条件をそろえやすくなります。

位置や構造が不明なときは、推測で申告せず「不明」と伝え、現地調査を依頼してください。

敷地内の浄化槽マンホール、ブロワー、配管、搬出経路の確認位置を示す図
マンホールやブロワーの位置、配管、搬出経路を事前に確認しておくと、見積条件をそろえやすくなります。

最終くみ取り・清掃・消毒は自治体へ確認する

使用済みの浄化槽には、し尿や汚泥、洗浄が必要な付着物などが残っています。撤去前には、自治体の案内に従って次の作業を行います。

  • し尿・汚泥などの引き抜き
  • 槽内の洗浄
  • 消毒
  • 汚泥等の収集運搬・適正処理

清掃は通常、所在地の自治体で浄化槽清掃業の許可を受けた業者等へ依頼します。必要な作業、処理方法、廃止届に添付する書類は自治体によって異なるため、全国一律の手順とは限りません。

汚泥を残したまま槽を壊す、敷地内へ流す、地下へ浸透させるといった処理は行わないでください。公共下水道へ自由に流せるものでもありません。

作業完了後は、清掃日・作業者・処理内容が分かる書類を保管しましょう。

実務ポイント3
解体見積書に「浄化槽撤去」とあっても、最終くみ取り・清掃が含まれるとは限りません。清掃の手配者、料金、実施日、完了書類の受取方法を別項目で確認してください。

浄化槽の撤去と埋め戻し(残置)の違い

「撤去後に穴を埋め戻すこと」と「槽を残したまま埋めること」は別です。

方法 内容 主な注意点
撤去後の埋め戻し 槽本体を搬出し、跡地へ適切な材料を入れる 転圧、残土、整地範囲を確認
部分撤去・残置 槽の一部または全部を地中に残す 自治体の取扱い、沈下や将来の掘削への影響を確認
継続使用 建物解体後も浄化槽を使う 新設建物との接続、保守管理、工事中の養生が必要

新築・売却を予定する場合は本体撤去を基本に検討する

撤去する場合は、必要な清掃を終えたうえで、槽本体、ブロワー、不要な配管やポンプ設備などを搬出します。撤去跡には現場条件に適した材料を入れ、段階的に転圧して整地します。

次の用途を予定している場合は、本体撤去を基本に、設計者や不動産会社とも相談してください。

  • 住宅や店舗を新築する
  • 駐車場として利用する
  • 土地を売却する
  • 地盤改良や杭工事を行う
  • 給排水管を新設する

埋め戻しが不十分だと、沈下や水たまり、新設基礎との干渉につながる可能性があります。

残置・部分撤去は自治体と土地利用を踏まえて判断する

撤去か残置・部分撤去かは、全国一律に決められるものではありません。次の条件を踏まえ、所在地の自治体、解体業者、新築予定があれば設計者へ確認します。

  • 自治体がどのような処置を求めているか
  • 汚泥の引き抜きや清掃が完了しているか
  • 槽の状態と構造
  • 何を、どの深さに残すのか
  • 雨水や地下水がたまらないか
  • 新築や売却に支障がないか
  • 将来撤去する場合の費用負担
  • 土地購入者等への説明方法

不要物の処分を目的として、槽の破片や解体廃材を埋め戻し材にすることは避けてください。解体工事でコンクリートガラを地中に埋める場合の注意点も確認しましょう。

汚泥・浄化槽本体・ブロワーの処分方法

浄化槽に関係する廃棄物は、すべて同じ方法で処分するわけではありません。

槽内のし尿・汚泥

浄化槽内のし尿・汚泥は、所在地自治体の一般廃棄物処理制度に従って処理します。自治体の許可を受けた浄化槽清掃業者等へ依頼し、指定された方法で収集運搬・処理してもらいます。

槽本体と付属設備

撤去工事で生じたものは、材質や状態に応じて分別します。

  • FRP製の槽本体
  • コンクリート製の槽本体
  • 金属部品
  • ブロワー
  • ポンプ
  • 電線・配管
  • 撤去時に発生した残土

具体的な廃棄物区分や委託方法は工事条件で異なるため、解体業者へ処理先と処理方法を確認してください。不要な本体や破砕片を、処分目的で撤去穴へ投入する方法は適切ではありません。

浄化槽使用廃止届は廃止日から30日以内

浄化槽法第11条の3により、浄化槽管理者は、浄化槽の使用を廃止した日から30日以内に届け出る必要があります。一般的な届出名は「浄化槽使用廃止届出書」です。

この廃止の届出は、2005年の浄化槽法改正(2006年2月1日施行)で設けられた制度で、2026年10月4日時点の条文では第11条の3に定められています。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、5万円以下の過料の対象となります(同法第68条)。

提出先は都道府県知事で、保健所を設置する市・特別区では市長・区長です(浄化槽法第5条)。そのほかの地域でも、実務上の窓口が市区町村などになっている場合があります。次の点は所在地の自治体へ確認してください。

  • 実際の提出窓口
  • 届出書の様式
  • 廃止日の考え方
  • 添付書類
  • 最終清掃記録の要否
  • 電子申請や郵送の可否

解体業者が自動的に提出するとは限りません。施主が提出するのか、業者が支援・代行するのかを契約前に決めてください。

なお、浄化槽法第11条の2に基づく「休止」と、使用を終了する「廃止」は別の手続きです。再使用の予定がある場合は、廃止か休止かを自治体へ相談しましょう。

建物解体で併せて確認する届出・事前調査

浄化槽使用廃止届とは別に、建物解体全体に関する手続きがあります。

石綿(アスベスト)の事前調査

建築物の解体・改修工事では、工事規模にかかわらず石綿の事前調査が必要です。調査は必要な資格を持つ者が行い、結果を記録・保存します。

建築物の解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は、元請業者等が着工前に事前調査結果を報告する必要があります。

「80㎡未満なら調査不要」という意味ではありません。80㎡は主に報告対象の基準です。

建設リサイクル法の届出

特定建設資材を用いた建築物の解体工事で、解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は、建設リサイクル法の対象建設工事となります。

対象となる場合、発注者または自主施工者は原則として工事着手の7日前までに、都道府県知事等へ届出が必要です(建設リサイクル法第10条)。窓口や必要書類は自治体へ確認してください。

これらは浄化槽単体の届出ではなく、建物解体全体に関する手続きです。

実務ポイント4
契約前に「浄化槽廃止届」「石綿事前調査・報告」「建設リサイクル法の届出」について、誰が確認・作成・提出するのかを一覧にしてください。

浄化槽の撤去・埋め戻し費用を左右する要因

浄化槽撤去には、全国一律の固定価格や公定単価があるわけではありません。費用は主に次の条件で変わります。

  • 浄化槽の種類・容量・材質
  • 設置されている深さ
  • 最終くみ取り・洗浄・消毒の内容
  • 汚泥の量と自治体の処理条件
  • 本体を一体で搬出できるか
  • 重機やトラックの進入可否
  • ブロワー・ポンプ・配管の撤去範囲
  • 埋め戻し材の量と種類
  • 残土処分、転圧、整地の範囲
  • 地中障害物や地下水の有無

小型の槽でも、重機回送費や車両費などの最低料金が必要になることがあります。反対に、建物解体と同時施工することで、重機や搬出車両を共用できる場合もあります。搬出条件が厳しい敷地では、住宅密集地の解体工事における費用・搬出の注意点も参考にしてください。

見積書で分けたい費用項目

費目 確認内容
最終清掃費 くみ取り、洗浄、消毒、汚泥処理
掘削・撤去費 槽周辺の掘削、本体の切断・撤去
付属設備撤去費 ブロワー、ポンプ、配管、電源
運搬・処分費 本体や撤去材の搬出・処理
埋め戻し費 材料の種類、数量
転圧・整地費 転圧方法、仕上げ範囲
残土処分費 発生残土の搬出・処理
届出関連費 提出支援や代行の有無

「浄化槽撤去一式」だけでは比較しにくいため、清掃・撤去・処分・埋め戻しを分けてもらいましょう。

地中障害物や地下水による追加費用に注意

浄化槽の周辺を掘削すると、図面にない設備が見つかることがあります。

  • 古い便槽や使用していない浄化槽
  • コンクリート基礎やガラ
  • 排水管・給水管
  • 地下水や雨水の流入
  • 想定より大きい槽や二重構造
  • 撤去に支障となる擁壁や構造物

地下水などの流入が多い場合は、排水対策や施工方法の変更が必要になることもあります。

追加費用の扱いは、契約範囲、現地で判明した埋設状況、事前説明の有無によって変わります。見積書・契約書には、追加工事を行う前の連絡、写真提示、金額承認の手順を記載してもらいましょう。

実務ポイント5
想定外の埋設物が見つかったら、すぐに撤去を進めず、位置・深さ・大きさが分かる写真と追加見積もりを受け取りましょう。口頭承認だけにしないことが重要です。

浄化槽対応業者への見積もり依頼方法

相見積もりでは、各社へ同じ情報を伝えます。

事前に渡す情報

  • 建物と浄化槽の所在地
  • 浄化槽の位置・種類・容量・材質
  • 現在使用中か、すでに停止しているか
  • 最終清掃の予定または実施日
  • マンホール、ブロワー、搬出経路の写真
  • 新築・売却・駐車場化など解体後の用途
  • 配置図、点検記録、清掃記録
  • 希望する撤去範囲と整地方法

不明な項目は、無理に埋めず現地調査を依頼します。

業者選びのチェックリスト

  • 浄化槽の撤去実績がある
  • 現地でマンホールやブロワーを確認する
  • 清掃業者との連携方法を説明できる
  • 汚泥と槽本体の処理を区別している
  • 本体・配管・付属設備の撤去範囲が明確
  • 埋め戻し材と転圧方法を説明できる
  • 廃止届の提出者を明示する
  • 処理先や処理方法を説明できる
  • 追加工事の承認手順を契約書に示す
  • 槽や廃材を処分目的で埋める提案をしない

よくある質問

清掃せずに解体業者が撤去できますか?

汚泥などを残したまま破損・撤去するのは避けてください。所在地の自治体や許可を受けた清掃業者等へ相談し、必要なくみ取り・洗浄・消毒を確認します。

浄化槽を残せば安くなりますか?

工事範囲が減る可能性はありますが、自治体の取扱い、将来の撤去費用、地盤沈下、新築・売却への影響を考える必要があります。費用だけで決めず、自治体や新築の設計者、不動産会社にも確認してください。

廃止届は解体前に出しますか?

浄化槽法第11条の3では、使用を廃止した日から30日以内の届出が必要です。提出窓口、廃止日の考え方、添付書類は自治体の最新案内を確認してください。

80㎡未満ならアスベスト調査は不要ですか?

不要ではありません。建築物の解体・改修工事では、規模を問わず石綿の事前調査が必要です。解体部分の床面積合計80㎡以上は、事前調査結果の報告対象となる基準です。

補助金は使えますか?

自治体によっては浄化槽の転換などに補助制度を設けていますが、建物解体に伴う単純撤去は対象外となる場合があります。制度の有無、対象工事、着工前申請の必要性を所在地の自治体へ確認してください。

まとめ

  • 見積もり前に位置・種類・容量を確認する
  • 自治体の案内に従って最終くみ取り・清掃・消毒を行う
  • 本体と付属設備を適切に撤去・処分する
  • 撤去跡を適切な材料で埋め戻し、転圧する
  • 浄化槽法第11条の3に基づき、使用廃止日から30日以内に廃止届を提出する
  • 建物解体に必要な石綿事前調査や建設リサイクル法の届出も確認する

残置・部分撤去の可否は、自治体の取扱い、槽の状態、将来の土地利用によって判断します。不要な槽の破片や廃材を処分目的で地中へ埋める方法は避けてください。

見積書では、最終清掃、本体撤去、運搬・処分、埋め戻し、転圧・整地を分け、追加工事の承認手順まで確認しましょう。

参考資料

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry