建築物の解体工事は、次の両方を満たすと原則として建設リサイクル法の対象です。
- コンクリートや木材などの特定建設資材が使われている
- 解体する部分の床面積合計が80㎡以上である
対象工事では、発注者または自主施工者が原則として工事着手日の7日前までに届け出ます。施工時には分別解体と再資源化等が必要です。
施主が先に確認する3点
- 解体部分が80㎡以上か
- 誰が届出書を作成・提出するか
- 契約書に分別方法、解体費、再資源化等を行う施設の名称・所在地、再資源化等の費用が記載されているか
届出窓口や様式、追加要件は自治体によって異なります。契約・着工前に工事所在地の最新案内を確認してください。
この記事の制度の説明は、2026年10月5日時点の条文(e-Gov法令検索で建設リサイクル法・同法施行令を確認)に基づいています。
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建設リサイクル法とは
建設リサイクル法の正式名称は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」です。一定規模以上の工事について、主に次の仕組みを定めています。
- 特定建設資材を種類ごとに分けて解体する
- 生じた廃棄物を再資源化等する
- 発注者が工事前に届け出る
- 解体工事業者に登録を求める(該当する建設業許可がある場合を除く)
目的は建設廃棄物の減量、資源の有効利用および適正処理です。施工業者だけでなく、施主などの発注者にも手続き上の義務があります。
解体工事業の登録が不要となる場合
解体工事業を営む者は、原則として施工区域を管轄する都道府県知事の登録が必要です。ただし、土木工事業、建築工事業または解体工事業の建設業許可を受けている業者は、建設リサイクル法上の解体工事業登録を受ける必要がありません。
なお、登録の要否と、請負代金に応じた建設業許可の要否は別の論点です。契約前に工事内容に対応する許可または登録を確認しましょう。
解体工事が対象になる条件
建築物の解体は80㎡以上が原則基準
| 工事の種類 | 規模基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 解体部分の床面積合計80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築 | 床面積合計500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替え等 | 請負代金1億円以上 |
| 建築物以外の工作物に関する工事 | 請負代金500万円以上 |
この記事では、住宅などの建築物の解体を中心に解説します。
80㎡以上だけでは対象と決まらない
建築物の解体では、次の順序で判断します。
- 特定建設資材が使われているか確認する
- 解体部分の床面積合計が80㎡以上か確認する
- 自治体条例による追加基準がないか確認する
「80㎡以上なら無条件で対象」ではありません。特定建設資材が使われていることも条件です。
判断するのは解体する部分の床面積
一部解体では、原則として実際に解体する部分の床面積合計で判断します。複数棟を一連の工事として解体する場合や面積が不明な場合は、自治体の届出窓口へ確認しましょう。
実務ポイント
登記事項証明書だけでなく、固定資産税の課税明細、建築図面、増築履歴も確認します。未登記部分があると、登記面積と解体面積が一致しない場合があります。
自治体条例による追加要件
都道府県などが異なる規模基準や追加手続きを定めている場合があります。80㎡未満でも次の項目を確認してください。
- 条例による対象基準
- 独自様式や追加書類
- 近隣説明や標識設置の要否
- 他法令に基づく届出

対象となる4種類の特定建設資材
- コンクリート
- コンクリートおよび鉄から成る建設資材
- 木材
- アスファルト・コンクリート
木造住宅には木材や基礎コンクリート、鉄骨造・RC造にはコンクリートなどが一般的に使われています。対象判定は図面や現地調査に基づいて行います。

分別解体と再資源化等の義務
分別解体とは
建物を一度に壊して廃材を混ぜるのではなく、施工基準に沿って種類ごとに分けながら解体することです。一般的には次の順序で進めます。
- 建物と周辺状況を調査する
- 設備や残置物を整理する
- 内装材、屋根材、外装材などを取り外す
- 構造部分を解体する
- 木材、コンクリートなどを分別して搬出する
実際の手順は、構造、周辺環境、アスベストの有無などによって変わります。
再資源化等とは
分別したコンクリート塊、建設発生木材、アスファルト・コンクリート塊などを、資材や原材料として利用できる状態にすることです。
建設発生木材は、最寄りの再資源化施設までの距離が50kmを超える場合など、法令所定の条件では再資源化に代えて焼却等による縮減が認められることがあります。
搬出先と処理方法は見積書や契約書で確認してください。「廃材処分一式」だけでは内容を検証しにくいため、解体工事の見積書の見方も参考にしてください。
発注者・元請業者・施工業者の義務
| 関係者 | 主な役割・義務 |
|---|---|
| 発注者 | 元請業者の事前説明を確認し、着工7日前までに届け出る |
| 自主施工者 | 対象判定、届出、分別解体等を行う |
| 元請業者 | 発注者への事前説明、下請への告知、分別解体・再資源化等、完了報告 |
| 下請業者・施工業者 | 届出内容や施工計画に従って施工する |
| 契約当事者 | 法定事項を記載した契約書面を相互に交付する |
発注者の義務
民間工事では、原則として発注者が届出義務者です。業者が代理提出しても、発注者としての義務がなくなるわけではありません。
- 元請業者から書面による事前説明を受ける
- 届出期限に間に合う工程か確認する
- 法定事項が契約書に記載されているか確認する
- 適正な分別・再資源化が可能な費用と工期を確保する
- 完了後に書面報告を受ける
元請業者の義務
元請業者は、契約前に分別解体等の計画を書面で説明します。下請業者を使う場合は届出事項を告知し、工事後は再資源化等の完了状況を発注者へ書面で報告します。
契約書に記載する法定事項
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等を行う施設の名称・所在地
- 再資源化等に要する費用
下請契約も対象です。契約後に工事内容や金額が変わる場合は、解体工事の追加費用と対処法も確認してください。
届出期限は工事着手7日前まで
発注者または自主施工者が、原則として工事着手日の7日前までに届け出ます。
「7日前」の数え方や工事着手の扱いは自治体にも確認してください。期限付近の閉庁日を考慮し、窓口へ確認したうえで、それ以前の開庁日に余裕をもって提出しましょう。
届出先
法令上の届出先は都道府県知事です。ただし、建築主事を置く市町村・特別区の区域で行う工事では、原則として市町村長・区長が届出を受理します(建設リサイクル法施行令第9条)。そのため、実際の提出窓口は工事場所ごとに異なります。国土交通省または工事所在地の自治体が公開する窓口一覧で確認してください。
届出に必要な書類と様式
一般的な提出書類は次のとおりです。
- 届出書(様式第一号)
- 分別解体等の計画を記載した別表
- 工程表
- 設計図または建物の現状写真
- 工事場所の案内図
- 委任状(代理提出の場合)
- 自治体が指定する提出部数・控え
写真形式、提出部数、押印、オンライン提出の可否などは自治体によって異なります。提出時は工事所在地の自治体が掲載する最新版を使用してください。
届出から工事完了までの流れ
- 対象工事か確認する:特定建設資材、解体面積、条例を確認します。
- 事前調査と計画:元請業者が構造、使用資材、廃棄物量、搬出先などを調べます。
- 事前説明:発注者が分別解体の方法や工程を確認します。
- 契約:解体費や再資源化施設などの法定事項を書面化します。
- 届出:着工7日前までに発注者または自主施工者が提出します。
- 施工:計画に沿って分別解体・再資源化等を実施します。
- 完了報告:元請業者が発注者へ書面で報告します。
全国共通の基本手続きは、元請業者から発注者への完了報告です。ただし、自治体独自の要領や公共工事では別の提出を求められる場合があります。
対象外となる工事と注意点
特定建設資材を用いていない場合や国の規模基準に満たない場合は、対象建設工事に該当しないことがあります。ただし、次の対応まで不要になるわけではありません。
- 廃棄物処理法に沿った処理
- アスベスト事前調査
- 建築物除却届などの手続き
- 騒音・振動や道路関係の手続き
- 自治体条例への対応
アスベスト事前調査とは別制度
建設リサイクル法の届出と、アスベスト事前調査・調査結果報告は別制度です。
元請業者または自主施工者は、建築物の解体等を行う際、規模を問わず原則としてアスベストの事前調査を行います。建築物の解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合などは、調査結果の行政報告も必要です。
80㎡未満でも事前調査が不要になるわけではありません。詳しくはアスベスト事前調査の対象・資格・報告義務をご覧ください。
違反した場合の主な罰則
| 主な違反 | 法令上の罰則例 |
|---|---|
| 対象工事の無届・虚偽届出 | 20万円以下の罰金 |
| 届出内容に対する変更命令違反 | 30万円以下の罰金 |
| 分別解体等・再資源化等の実施命令違反 | 50万円以下の罰金 |
| 無登録で解体工事業を営む | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 所定の記録の未作成・虚偽・未保存 | 10万円以下の過料 |
法人にも罰金が科される両罰規定があります。上表の金額は、2026年10月5日にe-Gov法令検索で建設リサイクル法第48条から第51条・第53条を確認したものです。罰則は改正される可能性があるため、最新の条文または所管窓口で確認してください。届出期限を過ぎた場合は無届のまま着工せず、元請業者と届出窓口へ直ちに相談しましょう。
解体業者を選ぶときの確認事項
- 該当する建設業許可または解体工事業登録がある
- 許可・登録番号を提示できる
- 対象判定の根拠を説明できる
- 契約前に事前説明書を交付する
- 届出代行の範囲と費用が明確である
- 分別解体の手順が施工計画に反映されている
- 再資源化施設と費用が契約書に記載されている
- 工事後に再資源化等の完了報告書を交付する
- アスベスト関係の制度と混同していない
- 廃棄物の処理方法と搬出先を説明できる
よくある質問
建設リサイクル法の届出は誰が提出しますか?
民間工事では、原則として発注者または自主施工者です。業者による代理提出も可能ですが、自治体によっては委任状が必要です。
80㎡ちょうどの解体工事は対象ですか?
特定建設資材を用いた建築物で、解体部分の床面積合計が80㎡ちょうどなら原則として対象です。自治体条例も確認してください。
80㎡未満なら届出は不要ですか?
国の基準では原則として対象外ですが、条例で別の基準が定められている場合があります。他法令の調査や届出も別途必要になり得ます。
業者に届出を任せれば施主は何もしなくてよいですか?
いいえ。代理提出を依頼しても、原則として届出義務者は発注者です。提出先、期限、提出済みであることを控えなどで確認してください。
工事完了後は役所へ報告しますか?
全国共通の基本は、元請業者から発注者への書面報告です。自治体独自の手続きや公共工事の取扱いも確認してください。
まとめ
特定建設資材を用いた建築物の解体で、解体部分の床面積合計が80㎡以上なら、原則として建設リサイクル法の対象です。
- 特定建設資材と解体面積を確認する
- 元請業者から分別解体計画の説明を受ける
- 法定事項を契約書へ記載する
- 着工7日前までに届け出る
- 完了後に再資源化等の書面報告を受ける
提出先、様式、追加要件は自治体によって異なります。契約・着工前に工事所在地の最新公的情報を確認してください。
参考資料
- e-Gov法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(第9条(分別解体等)、第10条(届出)、第13条(契約書面)、第16条(再資源化等)、第18条(完了報告)、第21条(解体工事業の登録)、第48条〜第53条(罰則)。2026年10月5日確認)
- e-Gov法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令」(第1条(特定建設資材)、第2条(規模の基準)、第9条(市町村長による事務の処理)。2026年10月5日確認)
- 環境省「建設リサイクル法施行規則について」(建設発生木材の縮減を認める距離の基準(50km)。2026年10月5日確認)
- 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」(石綿の事前調査と結果報告(建設リサイクル法とは別の制度)。2026年10月5日確認)