解体工事は、次の順序で進むのが基本です。
- 解体範囲を決める
- 現地調査と見積もりを依頼する
- 業者を選んで契約する
- ライフライン停止や残置物処分を進める
- 届出・アスベスト事前調査を確認する
- 近隣挨拶を行う
- 建物と基礎を解体する
- 廃棄物を分別・搬出する
- 整地と完了確認を行う
- 建物滅失登記などの手続きを行う
ただし、着工までの日数や工期、費用は、建物の構造・規模・地域・接道条件・アスベストの有無などで変わります。本記事では、施主が各段階で行う準備と確認事項を時系列で解説します。
目次[閉じる]
解体工事の流れと施主のチェックリスト
| 時期 | 主な工程 | 施主が行うこと |
|---|---|---|
| 問い合わせ前 | 条件整理 | 目的、撤去範囲、希望時期を決める |
| 見積もり時 | 現地調査 | 撤去物と残す物、追加費用の条件を確認 |
| 契約時 | 業者選定 | 許可・登録、工期、支払条件を確認 |
| 着工前 | 各種準備 | 残置物処分、ライフライン停止、届出確認 |
| 着工前 | 近隣対応 | 挨拶範囲、工事時間、連絡先を確認 |
| 工事中 | 解体・搬出 | 想定外の追加工事は承認前に根拠を確認 |
| 完了時 | 整地・検査 | 契約範囲、周辺損傷、追加請求を確認 |
| 解体後 | 登記・土地活用 | 滅失登記、売却や建て替えを進める |
1.問い合わせ前に解体条件を整理する
最初に、どこまで撤去するのかを明確にします。建物だけを依頼したつもりでも、基礎や外構が見積もりに含まれていない場合があるためです。
業者へ伝える内容
- 解体の目的:建て替え、売却、更地利用、空き家処分など
- 建物の所在地、構造、階数、延床面積
- 建築時期と増改築履歴
- 解体を希望する時期
- 基礎、塀、門扉、物置、庭木などの撤去範囲
- 家具・家電など残置物の量
- 図面や過去のアスベスト調査結果の有無
登記事項証明書、固定資産税の課税明細、建築図面、確認申請書類があれば用意しましょう。増築部分が未登記だと、登記面積と実際の解体面積が異なることがあります。
実務ポイント1
撤去する物と残す物を写真や配置図に書き込み、見積書・契約書にも反映してもらうと認識違いを防げます。

2.現地調査を受けて見積もりを比較する
契約前には現地調査を依頼します。図面や写真だけでは、重機の進入可否や隣家との距離、基礎、付帯物まで正確に把握できないためです。
現地調査で確認される項目
- 建物の構造、面積、劣化状況
- 重機やダンプが進入できるか
- 手壊しが必要な箇所
- 足場、養生、散水、交通誘導の必要性
- 基礎、外構、庭木、井戸、浄化槽の状況
- 残置物の種類と量
- アスベスト含有建材の可能性
- 廃棄物の搬出経路
見積書では、建物本体だけでなく、基礎撤去、足場・養生、廃材運搬・処分、付帯工事、アスベスト調査、整地まで確認してください。
解体費用は、地域、構造、立地、重機進入、残置物、基礎、外構、アスベストなどで変わります。坪単価や総額だけでなく、同じ工事範囲で比較することが重要です。
詳しくは、解体工事の見積もり完全ガイドと解体工事の見積書の見方をご覧ください。
3.業者を選んで契約する
安さだけでなく、必要な許可・登録、工事内容、廃棄物処理体制を確認します。
解体工事を請け負う業者は、請負代金500万円以上(税込)の工事では、原則として解体工事業など工事内容に対応する建設業許可が必要です。500万円未満の軽微な工事のみを請け負う場合でも、原則として施工区域を管轄する都道府県知事の解体工事業登録が必要です。ただし、土木工事業、建築工事業または解体工事業の建設業許可を受けている業者は、解体工事業登録を別途受ける必要はありません。
契約前の確認事項
- 許可または登録番号
- 解体する物・残す物
- 着工日、工期、作業時間
- 請負金額と支払時期
- アスベスト調査・除去費用の扱い
- 届出の作成・提出を誰が行うか
- 近隣挨拶の担当と範囲
- 廃棄物の運搬・処理方法
- 整地の仕上げ方
- 事故や隣家損傷への対応
- 追加工事の説明・承認方法
実務ポイント2
「地中埋設物があれば別途」といった記載だけで済ませず、発見時の写真提示、見積もり、施主承認を経てから施工する手順を決めておきましょう。
追加請求が発生した場合は、契約範囲、事前説明・承認、数量や処分根拠を確認します。詳細は解体工事の追加費用が発生する原因と対処法で解説しています。
4.ライフライン停止と残置物処分を進める
着工日が決まったら、電気やガスなどの停止・撤去を手配します。
| 設備 | 主な対応 |
|---|---|
| 電気 | 使用停止と引込線・メーター撤去の時期を確認 |
| ガス | 閉栓とメーター撤去を手配 |
| 水道 | 散水に使用する可能性があるため、業者と停止時期を調整 |
| 電話・通信 | 回線と引込線の撤去を確認 |
| 警備・設備 | 契約解除や機器撤去を手配 |
| 浄化槽・井戸 | 撤去・埋戻し方法を業者と確認 |
特に水道は、粉じん対策の散水に使うことがあります。施主の判断だけで早期に停止せず、解体業者と相談してください。
一般家庭の家具、衣類、生活用品などの残置物は、原則として一般廃棄物です。解体工事業登録や産業廃棄物収集運搬業の許可だけでは、家庭の残置物を回収・処理できません。
市町村が案内する方法で処分するか、市町村の一般廃棄物処理業許可を持つ事業者、または市町村から委託を受けた事業者かを確認してください。家電リサイクル法の対象品などは、別の処分方法が必要になる場合があります。
実務ポイント3
見積書の「残置物処分一式」だけで判断せず、処理する品目、量、担当事業者、処理方法を確認しましょう。確認項目は解体工事の見積書の見方でも解説しています。

5.必要な届出とアスベスト事前調査を確認する
届出には発注者が義務を負うものがあります。「業者に任せたから問題ない」と考えず、対象かどうか、誰がいつ提出するかを確認してください。
建設リサイクル法の届出
コンクリート、コンクリートおよび鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートといった特定建設資材を用いた建築物の解体で、解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は、原則として建設リサイクル法の対象です。
対象工事では、発注者または自主施工者が原則として工事着手日の7日前までに届け出ます。業者が書類作成や提出を支援する場合もありますが、役割分担を契約前に確認しましょう。
対象基準、窓口、様式、自治体条例による追加要件は、工事所在地の最新情報を確認してください。詳しくは建設リサイクル法の対象・届出・発注者の義務をご覧ください。
アスベスト事前調査
建築物の解体・改修工事では、規模を問わず、原則として工事前にアスベスト含有の有無を調査する必要があります。建築物の事前調査は、原則として必要な資格を有する者が行います。
「80㎡」は事前調査の要否を分ける基準ではありません。建築物の解体部分の床面積合計が80㎡以上の場合は、アスベストの有無にかかわらず、事前調査結果を行政へ報告する基準として関係します。
アスベスト含有建材が確認された場合は、建材や作業区分に応じた除去・飛散防止措置を講じます。届出の要否、届出先、期限は建材の種類や作業内容、自治体の条例などで異なるため、個別に確認してください。例えば、石綿含有吹付け材や保温材などを除去する特定粉じん排出等作業では、原則として発注者が作業開始日の14日前までに届け出る必要があります。
工期や費用も変わるため、調査結果と見積内訳の説明を受けましょう。詳細はアスベスト含有建物の解体ガイドで確認できます。
実務ポイント4
事前調査者の資格、行政報告の対象、除去作業に必要な届出の担当者と期限を一覧にし、着工前に提出状況を確認しましょう。
6.近隣挨拶と着工準備を行う
解体工事では騒音、振動、粉じん、工事車両の出入りが生じます。施主と業者のどちらが挨拶するかを決め、着工前に近隣へ案内します。
挨拶時に伝える内容
- 工事期間と作業時間
- 施工業者と現場責任者の連絡先
- 騒音・振動・粉じんへの対策
- 工事車両の通行予定
- 休日作業の有無
両隣、向かい、裏手に加え、工事車両の動線上にある住宅への案内も検討します。
実務ポイント5
着工前に隣家の外壁・塀・植栽、境界杭、前面道路を写真で記録してください。工事後に傷や傾きが指摘された際、工事前後を比較しやすくなります。

7.足場・養生から建物解体までの工程
現場条件により順番は変わりますが、一般的には次の工程で進みます。
1.仮設・足場・養生
足場、防音・防炎シート、仮囲いなどを設置します。散水設備や交通誘導員を配置する場合もあります。
2.残置物・内装材・設備の撤去
建具、石膏ボード、設備、断熱材などを分別しながら撤去します。アスベスト含有建材がある場合は、調査結果に応じた方法で原則として先に除去します。
3.屋根・上部構造の解体
屋根材などを撤去し、周囲への飛散や落下に注意しながら上部から解体します。
4.建物本体の解体
重機または手作業で躯体を解体します。狭小地や住宅密集地では、手壊しや小型重機が必要になることがあります。
5.基礎・土間などの撤去
契約範囲に従って基礎や土間を撤去します。この段階で旧基礎、井戸、浄化槽などの地中埋設物が見つかることがあります。
6.分別・搬出・整地
廃棄物を種類ごとに搬出し、穴を埋め戻して地面をならします。砕石敷きや転圧を行うかなど、整地仕様は契約によって異なります。
8.廃棄物の適正処理を確認する
建設工事で発生した産業廃棄物の排出事業者は、原則として元請業者です。元請業者がマニフェストなどで運搬・処分状況を管理します。
施主は次の点を確認しましょう。
- 契約内容に沿って分別解体されているか
- 収集運搬・処分の体制が適切か
- 処理終了をどのように確認できるか
- 対象工事では再資源化等の完了報告を受けられるか
施主が当然にマニフェストを発行・受領するわけではありません。完了報告の内容や処理確認方法を契約時に質問してください。
建設リサイクル法の対象工事における再資源化等の完了報告は、建設リサイクル法の対象・届出・発注者の義務で解説しています。
9.工期が延びる主な原因
解体工事の期間は建物の構造・規模だけでは決まりません。次の事情があると、着工や完了が遅れる場合があります。
- 雨、強風、降雪
- アスベスト分析や除去作業
- 地中埋設物や想定外の基礎
- 重機・ダンプの進入制限
- 道路使用や交通誘導の調整
- 隣地・境界に関する協議
- 廃棄物処分場や搬出経路の事情
- 届出やライフライン撤去の遅れ
売却や建て替えの期限がある場合は、解体作業だけでなく、調査・届出・ライフライン撤去に必要な日程も含めて余裕を持たせましょう。
10.整地後に現場を確認して支払う
完了連絡を受けたら、可能であれば業者と現地を確認します。
完了時のチェック項目
- 建物、基礎、外構が契約どおり撤去されているか
- 残す予定の塀や樹木が傷ついていないか
- 整地方法が契約内容に合っているか
- 廃材やごみが残っていないか
- 道路や隣地に損傷がないか
- 境界杭が残っているか
- 必要な完了報告書や証明書を受け取ったか
追加費用がある場合は、支払う前に写真、数量、単価、処分量、事前承認の記録を確認してください。
11.解体後に建物滅失登記を行う
建物を取り壊したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、原則として建物を取り壊した日から1か月以内に建物滅失登記を申請します。期限内に申請しない場合は、過料の対象となる可能性があります。
解体業者から取壊し証明書など、登記に必要となる書類を受け取り、速やかに手続きを進めましょう。必要書類や申請方法は登記状況によって異なるため、管轄法務局または土地家屋調査士へ確認してください。
登記後は、目的に応じて新築、売却、駐車場、資材置場などの土地活用へ進みます。固定資産税や売却条件への影響は個別事情で異なるため、自治体、税務署、税理士、不動産会社などへ確認しましょう。
解体工事を円滑に進める3つのポイント
- 撤去範囲を写真と書面で残す
建物、基礎、外構、庭木、残置物、整地方法まで明確にします。 - 届出とアスベスト調査を着工前に確認する
発注者側に義務がある手続きを含め、担当者と期限を整理します。 - 追加工事は説明・見積もり・承認後に進める
写真、数量、単価、処分根拠を確認し、合意を書面に残します。
解体工事は、契約して着工を待つだけではありません。施主が各段階の確認事項を押さえることで、追加費用や工程の行き違いを減らせます。